大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)1914号 判決

しかし、今日銀行が行っている手形割引は通常単なる手形の売買ではなく、銀行が手形割引依頼人に対し広い意味での信用を供與する手段として行っているものであり、手形割引によって極めて多数の手形を取得し、銀行の與信業務の重要な一部門をなしていることは公知の事実である。そして銀行が右多数の割引手形につき手形の主たる債務者である引受人(為替手形)又は振出人(約束手形)の信用状態を常に調査し把握しておくことは困難であるので、資金の確実な回収に万全を期するためには、手形の主たる債務者について信用状態が悪化した場合のみならず、直接の取引先である手形割引依頼人について信用状態が悪化した場合においても満期前の手形の買戻により資金の回収をはかり得る手段を講じておく必要があることは当然のところであって、全国銀行協会連合会において昭和三七年八月銀行取引約定書ひな型を公表し、右ひな型において手形割引依頼人について信用悪化の事由が生じた場合においては、銀行は同人の依頼によって割引いた全部の手形について満期前と雖も手形面記載の金額による手形買戻請求権を行使できる旨を明記し、その後加盟の各銀行において右ひな型にもとづく約定書(甲第八号証参照)が広く使用されるに至っていることは公知の事実である。そして右事実に加えるに当審証人山口輝久の証言によれば、全国銀行協会連合会が右銀行取引約定書ひな型を公表する以前においても、銀行が手形割引依頼人に対して前記のごとき手形買戻請求権を有することは事実たる慣習として広く行われており、右ひな型の規定はこれを明文化したに過ぎないものであって、本件の被控訴人と控訴人との間の手形取引約定書も右事実たる慣習を前提とするものであることが認められる。

(平賀 石田実 安達)

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